遺伝子組み換え作物の不安

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遺伝子組み換え作物とは
 遺伝子組み換え作物(GMO [genetically modified organisms]とは、ある生物から有用な遺伝子を取り出し,それを他の生物の遺伝子に挿入することによって開発された作物のことです。特定の除草剤をかけても枯れない除草剤耐性作物や殺虫成分を作るようになった害虫抵抗性作物などが実用化されています。

日本では遺伝子組み換え作物はほとんど栽培が行われておらず、アメリカやカナダ、アルゼンチンなどが栽培の中心地です。日本では、1996年、遺伝子組み換え作物の輸入が政府によって認可され、現在、大豆、ナタネ、トウモロコシ、ジャガイモ、綿実、てんさいの6種が市場に出回っていますが、このほとんどが害虫抵抗性作物と除草剤耐性作物です。遺伝子組み換えイネも実用化段階に入っていると言われています。

害虫抵抗性作物…殺虫成分を作る細菌の遺伝子を植物体に挿入して作られます。植物が常に殺虫成分を産出しているため農薬の使用量が減少するといわれています。
Bt菌の遺伝子を挿入したものが有名です。バチルス・チューリゲン(Bt)という微生物が出すBtタンパク(特定の害虫を殺すタンパク)を作る部分の遺伝子を取り出して、農作物に導入したものです。一番よく知られているのが、Btコーンと呼ばれるトウモロコシで、トウモロコシにつくヨーロピアン・コーン・ボーラーという害虫に殺虫効果があります。
ヨーロピアン・コーン・ボーラーがBtタンパク質を食べると、消化管の中で殺虫効果を持つ形に活性化され、消化管の細胞が破壊されてしまいます。このためヨーロピアン・コーン・ボーラーがBtタンパク質を食べると、死んでしまうのです。

除草剤耐性作物…除草剤に耐えるバクテリアの菌からその遺伝子を作物に移すことによって、除草剤に耐性を持つ作物が作られた。作物への影響を気にせず、効果的に除草剤が散布できるので除草剤の使用量が減少するというのが売り文句です。モンサント社の開発した「グリホサート(商品名:ラウンドアップ)」という除草剤の耐性作物が有名です。
遺伝子組み換えと品種改良の違い
 今までの品種改良は、交配を繰り返すという方法で行なってきました。これとは違って、遺伝子組み換え作物では、遺伝子を直接入れかえるという方法で、まったく新しい品種を作り出していきます。長い時間をかけて交配して行くのと比べて、種の壁を越えてまったく違う種(例えば昆虫や哺乳類でも)の遺伝子を取りいれる事が可能になる点が、最大の違いです。
遺伝子組み換え技術を応用することで、生物の種類に関係なく品種改良の材料にすることができるようになりました。従来の人工交配による品種改良でも遺伝情報は混ぜられており、また人工的に起こした遺伝情報の突然変異を利用することもあります。しかし、生物の「種の壁」を越えることはできませんでした。
遺伝子組み換え技術が従来の品種改良と異なる点は、人工的に遺伝子を組み換えるため、種の壁を越えて他の生物に遺伝子を導入することができる点です。
遺伝子組み換え作物による事故  
遺伝子組み換え作物を巡る米国とEUの対立など、世界中で遺伝子組み換え作物についての賛否両論が渦巻いています。安全性や生態系への悪影響が懸念されているからです。いくつかの問題となった事例を紹介します。

トリプトファン事件・・・・・健康食品として販売されていた必須アミノ酸の一つである「L−トリプトファン」を食べた人が、「好酸球増加筋肉痛症候群」という症状を起こしました。1988〜89年にかけて判っているだけでも米国を中心にして約1,600人の被害者を出し、そのうち38人が死亡するという食品公害がありました。その「L−トリプトファン」製剤は、日本のある企業が遺伝子組み換えをした細菌に作らせて製品化したものでした。予期せぬ2種類のタンパク質が生成され、それがある体質の人に作用した結果のことでした。

ブラジルナッツ・・・・・ブラジルナッツの遺伝子を組み込まれたトウモロコシを飼料とした鶏肉を食べた消費者がアレルギーを起こしました。

スターリンク・・・・・フランスの大手化学会社が開発した遺伝子組み換えトウモロコシです。消化器で分解されにくく、人体にアレルギーを起こす可能性があるので米国では栽培禁止になりました。

英国の研究所・・・・ 1998年8月、英国のロウェット研究所のアーパド・パズタイ博士は、英国のテレビ番組で、遺伝子組み換えされたジャガイモにより、ラットに発育不全や免疫低下などがみられたと公表しました。
この研究で使用されたジャガイモは、マツユキソウ中のレクチンという殺虫成分を産生する遺伝子を挿入したものです。この実験では、遺伝子組み換えジャガイモとその元となった非組み換えジャガイモ、及び非組み換えジャガイモにマツユキソウレクチンを添加した三種類の餌を、ラットに与えたときの影響を比較しています。結果、組み換えジャガイモの餌によりラットの一部の臓器や免疫系への影響が出ました。

害虫以外の蝶の幼虫が死んだ・・・・ 米国コーネル大学のジョン・E・ロゼイ助教授のチームは、英国科学誌ネイチャー5月号に殺虫成分(=Btタンパク質)を導入した殺虫性トウモロコシが、チョウに被害を及ぼす恐れがある、との研究結果を発表しました。実験は、殺虫性トウモロコシの花粉を振りかけたトウワタという植物の葉を、オオカバマダラという米国では有名な蝶の幼虫に食べさせたところ、4日間で幼虫の44%が死亡し、生き残った幼虫も発育不全になったというものです。

生態系の破壊・・・・・従来種との交配で予期せぬ新種ができる心配があります。これを食い止めることは不可能で、実際に起こっています。新種は風に流されたり、または鳥によって運ばれ世界中に飛散するのです。
遺伝子組み換えの問題点
1.人体への影響(一つの例)
 先に説明したBtコーンについて、作った側は、「人の場合は胃の中は酸性で、消化管内の環境が虫とは異なるため、消化酵素の働きでBtタンパク質は活性を持たない形に分解されてしまいます。」というが、果たしてそうか。
 北欧のウイルス学者が、ミンダナオ島の遺伝子組み換えトウモロコシ(Btコーン)栽培場近くに住む農業従事者の免疫系統に異常が見られたと発表した。調査結果が裏付けられれば、GM作物に対する反対運動に発展する可能性も懸念される。ノルウェー遺伝子環境研究所のテリエ・トラビク教授がロイター通信に明らかにしたところによると、39人から採取した血液サンプルで3種類の抗体が異常増殖していたという。
 また上述したように、米国コーネル大学のジョン・E・ロゼイ助教授のチームは、「殺虫成分(=Btタンパク質)を導入した殺虫性トウモロコシが、チョウに被害を及ぼす恐れがある」、との研究結果を発表しました。このことからも、急性毒性はなくても、長期的に見た場合、人体への影響が懸念されます。

2.遺伝子組み換えは「技術」未満
 現在の遺伝子組み換えでは、生物の細胞から遺伝子を切り取ることや、生物の遺伝子を合成することはできるようになりました。しかし肝心の「組み込み」については、人間は制御できません。できるのは目的の遺伝子セットを目的の宿主生物の細胞に「潜り込ませる」だけで、その先の「組み込み」は、生物任せです。遺伝子セットが、宿主の染色体のどこに入るか、あるいはいくつ入るかは、全部偶然に頼っています。
偶然に頼っていますから、同じ作物と同じ遺伝子セット使っても2つとして同じものは作れないのです。こうしたことを再現性がない、と言います。
「技術」とは、再現性があり、私たち人間が制御可能であることが前提となります。
もともと、目的の作物(動物)の遺伝情報(ゲノム情報)、染色体の遺伝子地図もほとんどがわかっていないのが現状です。どこに入ったのかもわからないのですから、元々あった遺伝情報をどのように変化させてしまったかということもわかりません。

3.組み換え事故は制御困難 
遺伝子組み換えは、よく原子力発電に例えられます。うまく使いこなすことができれば、その生み出すものは大きいのですが、ひとたび事故が起きれば取り返しがつかない点が似ているからです。しかし、原発は人間が作ることを止めれば現状以上に増えることはありません。一方、遺伝子組み換え生物は、一度作り出され、環境に放出されれば、生物として増殖を続ける可能性が存在します。その点でも制御することが難しいのです。

4.既に事故が起きている
 上の事例に見られるように、すでにいくつかの事故の報告があり、環境への影響も懸念されています。

5.ずさんな「安全性審査」
 現在の安全性審査は、
@ 審査自身が開発者(輸入者)の任意であり、強制力はない。
A
申請者の提出した書類を審査するのみであり、第三者機関による試験ではない。
B  組み換えされた作物そのものの摂取試験は実質免除されている。
C
組み込まれたタンパク質も急性毒性試験だけ。(長期的、慢性的毒性については免除)

以上のように二重三重のずさんな「審査」となっています。その結果、日本で「安全審査」されていない組み換え作物が出回っても何の規制もなく、現に多くの食品に未審査の組み換え作物が原料として使われています。厚生省はようやく安全審査を法制化し、強制力を持たせるとともに未審査のものは販売できないようにすることを準備していますが、現在の市場は野放し状態です。また法制化されても@が改善されるだけで、ABCの点は変えない意向のようです。これでは遺伝情報がどのように変わっているか判らない遺伝子組み換え食品の安全審査としては決定的に不十分です。

6.作物の「種子」が独占される(大手アグリビジネス企業による種子支配
 大手アグリビジネス企業は、農家がGM作物のタネを知り合いに分けたり売ったりするのを嫌った。そこで、巨大企業は、タネが実らないGM大豆を開発したのです。種子不稔技術という悪夢を、大豆に付け加えたのです。
もちろん、農家は驚愕した。自分の畑でなった作物から、タネが採れないのだから。結局、農家は、大企業製GM大豆を使う限り、永遠に、毎年、タネを大量に買い付けなければならないことが、現実に起こっています。
 また、組み換え作物の開発メーカーは、次々と他の開発企業や種子会社を合併、買収しています。現実では生命に対する特許が張り巡らされ、作物の種子の独占状態が急速に広がっています。
EUの現状
 EUは1998年10月に、組み換え作物の新規認可を凍結し、遺伝子組み換え作物の栽培を許可していません。以来、さまざまなEU規則を通じて組み換え作物の新規認可を先送りし続け、遺伝子組み換え技術を使った米農産物の輸入も規制してきました。食品としての未知なるリスクを恐れると同時に、アメリカの「武器」となりそうな、安価な作物を警戒してのことでもあります。
 また米国は、EU加盟国の一部は組み換え作物の輸入禁止措置を維持しており、こうした措置がWTOの「衛生植物検疫措置の適用に関する協定」(SPS協定)や農業協定に違反すると主張しています。

 害虫への抵抗力強化などを目的とした組み換え作物をめぐっては、非政府組織(NGO)などが、健康だけでなく、土壌や生態系など環境への影響を指摘しています。

 また、米政府は03年5月13日、欧州連合(EU)が遺伝子組み換え作物の輸入を規制しているのは世界貿易機関(WTO)協定違反だとして、WTOの紛争処理機関に提訴しました。通商筋によると、安全性を中心とする組み換え作物の是非がWTOで本格的に争われるのは初めてとのことです。

 米国とEUは、組み換え作物の認可基準や、組み換え作物を使用した食品の表示義務、さらには「疑わしきは認めず」とした「予防原則」などをめぐり対立を続けてきました。今回の紛争は「自由貿易と安全性・環境保持」の対立を軸に、国際機関が両者の主張に裁定を下すケースとなります。
日本の現状
 日本国内では、遺伝子組み換え作物の栽培は許可されていません。日本国内で販売されている遺伝子組み換え食品の原料は、主にアメリカからの輸入品です。
国内で販売されている伝子組み換え作物不使用と表示された39品目のうち、16品目から遺伝子組み換え農作物のDNAが検出されました。(厚生労働省国立医薬品衛生研究所)
食品の遺伝子組み換えの表示違反が4330件あり、そのうちの16%にあたる704件は表示さえもしていませんでした。
遺伝子組み換え作物不使用と表示されているのに、遺伝子組み換えのDNAが発見されるとは問題外で、製造者のモラルが厳しく問われますが、消費者にとっては「遺伝子組み換え不使用」の表示を頼りにして買うしかありません。こんな信頼できないような現状で、しかも上記6種の農作物やその加工品の原料のほとんどがアメリカなどからの輸入品が大半を占めていて、国産品が少なく遺伝子組み換えの可能性が高いとすれば、表示のないもの、疑わしいものは絶対避けるべきです。
このよう視点から、遺伝子組み換え作物の表示の問題についても、実例の中で詳しく説明しました。



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